・出展数 118首
・会場 みさと館
・選者 秋葉 四郎
○入選(五首)
・夢にだに思はぬ齢永らへて老いをうべなう静かなる日々
栗栖 絹枝
・日溜りの庭に憩えば眠りよりさめしか蝦蟇が折をりに鳴く
水津 正夫
・離乳して牧に出たる牛の子がつひに鳴きやみ若芽食みをり
尾原 裕子
・宵闇に救急車の音去りゆきて一人居の部屋海鳴りつづく
長谷川 義剛
・陽の匂ひ残る冬服しまひつつ子らの成長手に感じゐつ
城市 江梨子
○佳作(五首)
・二輪車に乗るまで曾孫成長すかかる楽しみありて老いゆく
大田 いき子
・春雪のとけたる朝にあまた萌ゆふきのたう昨日見ざりし庭に
藤原 澄子
・雨水今日甑倒しを迎えたり杜氏の孫が髯を剃りゐる
櫻尾 道子
・内臓の病ひなけれど認知症出でし夫をただにさびしむ
小野 澄子
・ことさらに細くなりたる母の声われを忘れずわれを待ちゐる
上野 千里